子どもたちに、スクールの月ごとの電気代の領収書を1年分コピーしたものを
渡しました。
「1万円を越えているときがある」
「422kwh使ったんだ」
子どもたちは目ざとくいろいろな情報を見つけてはつぶやきます。ただ、あまり
にもいろいろなことがごちゃごちゃ書いてあるうえに、12枚も領収書があるので、
年間を通じての電力消費の実態が見えてきません。
今回の学びで身につけてもらいたいスキルの一つは、集めたデータを「きちんと」
整理すれば「追究の種」が生まれると実感することです。そこで、毎月支払って
いる電気料金を表とグラフにまとめてくる宿題を出しました。
「おれの数字と違う」
さあ、テーマ学習を始めようと部屋に入ると、隣の席の子と表に書かれた数字を
見比べている子がいます。「宿題」としてやってきたことが正しいかどうかは子ど
もにとって非常に気になることでしょう。ただ、今回の学びでは、宿題が合ってい
たかどうかという「意識」で気になるなら、それはまだ「甘い!」と子どもたちに指
摘しなければなりません。数字で語るからには、その数字に「信頼性」が求めら
れます。そうでなければ、実社会において数字で現されたデータの持つ価値は
なくなってしまいます。
「よし、表の数字を確かめてみよう」
宿題として作成してきた表の数字が正しいかどうか領収書と照らしあわせ、みん
なで読み合わせて確かめます。
「やったあ、全部合ってた!」
「わあっ!間違って書いちゃった」
「おいおい、間違えたでは困るよ。ちゃんと見直してみた?記入した後、もう一度、
正しいかどうかチェックすることが、数字のデータを扱うときの基本だよ。次は
“絶対に”こういうことのないように!」
世の大人たちは、結構、いい加減に数字を用い、そんな無意味な数字に振り回
されている現実があります。しかし、将来を背負う君たちにはそうなってもらいた
くないのだ!という思いを訴えるべく、厳しく、ダメ出しをします。
次に、グラフを確認です。表の段階でミスした子は、すでに正しいグラフを書けて
いないことが明らかです。では、表を正しく書けていればすべてOKか……当然、
そんなことはありません。子どもたちから集めた、グラフの書かれた方眼用紙を
ホワイトボードに並べてじっくり眺めてみます。
「あーっ、おっちゃん、自分の間違い発見しちゃった」
一目見ただけでは同じに見える折れ線グラフが並んでいるのですが、よく見ると、
微妙に異なる部分が見つかります。いったいだれが正しいのか……みんなで
精査します。
「1つ飛ばしてる…」
1ヶ月分飛ばして折れ線をつなげています……。
「目盛りの数え方が違う」
「2マスで100だから、700だったらそこじゃないよ」
点を打つ位置を間違えてしまいました。
折れ線の形が大きく違うという子はひとりもいませんでしたが、見落としがちな
微妙な誤りを発見できました。表を作るときだけでなく、それをグラフ化するとき
にミスしてしまっては、せっかくの「宝物」が台無しです。そのことを改めて肝に
銘じつつ、生データを表にしグラフ化する意義を考えます。
「どう何か見えてきた?」
そう問いかけると
「冬の方が使ってるよ!」
「12月から3月までが高い」
「そう、そう、だからグラフの真ん中が窪んでる」
「やっぱ、暖房の方が電気くうのかなあ」
「夏は休みが長いからスクールの電気使わないからじゃない?」
「でも、その割には結構使ってるように見えるな」
一気に議論が活発化します。ある期間における「傾向」を読み取るには「折れ線
グラフ」は大いに役立ちます。グラフとしてビジュアル化したからこそ、データの
解釈が可能になることを子どもたちは実感しました。
さあ、さらにリサーチスキルに磨きをかけるため、再び生データの整理です。
今度は、先週から、今週の始めにかけてみんなで手分けして調査してきた、家電
製品と電灯の消費電力です。調査の際に用いたワークシートに、どの部屋か、
家電製品名と消費電力量、蛍光灯か白熱電球か、といった情報が書き込まれて
います。
「これは数字がわからないなあ」
雑に記録したため数字がはっきりしないものは調べ直し。
「あれ?3Fのトイレの電球のデータがない!」
調べもれがないかどうかもチェック。
「あそこは、蛍光灯じゃないんじゃない?」
調査対象についての情報があいまいな場合も改めて調べに行きます。
このように再調査して修正したデータを、これからの作業のために、表として
見やすくまとめてくるのが週末の宿題です。次週は、これらのデータを使って
数字によるシミュレーションを行い、どんな節電対策が必要か考えるヒントを
得ます。
RI
※TCS2010年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。