個人のより豊かになりたい、便利になりたい、という欲求は、世界中の人々が
それを満たそうとすると、限られた資源を奪い合い、地球環境を破壊してしまう
結果につながりかねません。対立、葛藤を克服し、資源を公正に分配しつつ、
みんなが幸福な生活を追い求めるにはどうすればよいか考えてゆく探究領域
が「共存共生」です。
今回は、小4・5の計8名とともに、私たちの日々の生活でのエネルギー消費
について追究します。
「私たちはどんなエネルギーを日々の生活で用いているだろう?」
この投げかけに対し
「電気!」「ガス!」
という答えが即座に返ってきました。
「うちはガス使ってない。オール電化だから……」
それを受けて
「うちもIHだよ」
「お風呂も電気でわかせるでしょ!」
これまでガスが担っていた領域でも電気が使われているという意見が出てき
ました。そこで、改めて、
「電気を何の目的に使っているんだろう?」
とたずねると、
「電灯」「クッキング」「暖房」「モーター」「デジカメ」「パソコン」「料理」
光源、熱源、動力源、そして情報機器という多様な目的のために電気を利用
し、日々の生活において、電気なしでは生きられないほど大いに依存している
実態が明らかになってきました。
「今回のミッションは、わたしたちが毎日の生活でどれだけ電力を使っている
か徹底的に調べることだ!」
追究すべき課題を提示すると
「じゃあタイトルは楽しく省エネNo.1にしよう!」
「楽しくムダを減らさないとね」
子どもたちはミッションの意図を的確に理解し、強い興味を持って課題に取り
組み始めました。
「わあ、円盤がぐるぐる回ってる!」
スクールの外壁に設置してある積算電力計を見に行きました。
「これ、うちにもある!」
今までなんとなく目にしてきたものが、電力量を測定するためのメーターだと
気づきます。部屋に戻り、ブレーカーを落とし、電気をまったく使わない状態に
すると、円盤は停止しました。電力を消費していることが円盤の回転でわかる
ことを確かめました。続いて、クーラー、電子レンジ、電灯、掃除機、パソコン
等々、スクールのありとあらゆる電気製品のスイッチを“ON”にしました。すると
驚くほどの速さで円盤が回転します。
「こんなに使って大丈夫かな……」
ある程度予想していたとはいえ、激しく回転する様子を目の当たりにし、こんな
に電力を使って大丈夫かという思いが子どもたちの心の中に生まれたようです。
スクール全体の電力量を測定したければ、積算電力計を用いればよいことが
わかったところで、個々の電気製品がどれぐらい電力を使っているのか、一つ
ひとつ調査する作業に入りました。
「どこを見れば電力消費量がわかるのかな?」
と言ったか言わないかのうちに、子どもたちは、席を離れ、エアコンの下に集ま
り、製品に関わる情報が書かれたシールが本体に貼られているのを発見し、
読み上げます。
「100Vだって」
「電力消費量って書いてある!」
「KWだよ」
「ああそれキロワットって読むんだよ」
子どもたちは、家電製品のどこかに電力消費量何Wと書かれているから、それ
を探せばよいと理解します。
「みんなで分担して早く調べよう!」
受け持ちの部屋を決めて、そこにある家電製品の電力量を調べ。それを丁寧に
記録していきます。今回のテーマ学習で力を入れたい重要なポイントが、
“きちんと調べ、きちんと記録し、きちんとまとめること”
です。製品によっては、どこにも電力消費量が書かれていないものがありました。
その場合は、電話で聞けばよい……インターネットでどこに電話をかければよい
か調べ、わかったら即、電話!わからないことが出てきたら電話をかけて情報を
収集する……これまでテーマ学習を積み重ねてきて身についたリサーチスキル
と言えましょう。という態度が身についているのは嬉しいことです。
「もしもし、ちょっとおうかがいしたいことがあるのですが」
インタビューの得意な子がまず電話をかけて見本を示し、周りの子がそれを見て
学んだり、その子が話している内容をメモしたりしています。
さあ、来週は、こうして集めた貴重なデータを整理して、そこから考えられることを
解釈し、まとめます。
RI
※TCS2010年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。