“いつでも、どこでも、世界中の人々とつながって、何かを変えることができる”
という意識の芽生えを促すことが今回の学びの目的でした。テレビやインター
ネットからあふれでる2次情報にどっぷりつかっている子どもたちは、なんとなく
海の向こうの国々について「知ったつもり」「わかったつもり」になっています。
「テレビでやってたけど、〇〇人ってバカなことばっかりするんだよね」
「△△って貧しくて、水道がないところだからかわいそうだよね」
なんとなく見聞きした2次情報で先入観が作られています。そんな子どもたちが
ネットという「ツール」を活用しつつ、物理的に大きく離れた人たちと手紙を介して
直に“つながる”ことを企てました。
相手が小学生ならば自分たちの思いを理解してくれるのではないか……
じゃあ、小学校に送ってみよう!と発想する。そこで、TCSと似たタイプの学校を
「ネットサーフィン」して探す……いろいろな検索キーワードを試し、学校のHPだけ
でなく、個人のブログや、世界のオルタナティヴスクールについてまとめたHPから
も情報を見つけ出す……ひょんなことで面白い学校を発見し、手紙を出すことに
決める!直につながるために、ボーダレスに世界をつなぐインターネット情報を
いかに活用するか学んだことは、今回、子どもたちにとって大きな収穫でした。
「ツール」の活用法を学んだという観点からすれば、「インターネット」だけでなく
「ツール」として「外国語」を学習したことも、有意義なことでした。テーマ発表の
際に、英文ビデオレターで撮影すべき内容を実演することにしましたが、子ども
たちはその部分の練習が予想に反してすんなり終わったことに驚いていました。
英語で文を作ったり、読んだり、覚えたりするところはとても大変だった。
でも、なんか知らないうちに読めるようになったり、覚えたりできるようになった。
そのときに、自分なりに工夫して覚えた。
という感想が、ふりかえりのときに子どもたちから出ました。
学ぶ過程での「大変さ」が、英語嫌いにつながらず、かえって英語獲得への
執念を引き出したのは、「機械的な作業」ではなく、「獲得する意義」を見出
した上での「大変さ」だったからだと言えましょう。目的達成のための「ツール」
として英語を必要としたことが、負荷の大変さを乗り越え、どうやって英語を
ものにするか、どうしたらもっと英語をうまく使うことができるか、という動機づけ
を生みました。外国語の学習は、使う必然性のある状況で、本人が獲得したい
という意欲を持った上で行うものです。したがって、探究のための「ツール」として
外国語を必要とするような学びを仕組むことがとても重要だということを改めて
痛感しました。
自分が動けば何かが変わる……という実感を得るところまでは、テーマ学習の
期間中には到達できませんでしたが、用いる言葉一つ一つに細やかな神経を
使うことの重要性についてじっくり議論できたことで、「時空因縁」という探究領域
で身につけたい視点を養うことにつながったと感じています。それは、不用意な
一言が「騒乱」の引き金になり、歴史を変えてしまうことがあるからです。また、
一般民衆の偏見や根拠のないデマの流布が、社会を混乱に陥らせてしまうから
です。たかが言葉でありながら、政治家の一言、世論を形成する一言が、時代
を動かしかねない……だからこそ私たちは、たとえ善意に端を発したものであっ
ても、相手の立場に自らを置いてみて、自らの発言を組み立ててゆくという慎重
な思考スタイルを磨き続けなければならない。今後も続けてゆく活動を通じて、
さらにこれらのことについて子どもたちと議論を深めてゆくつもりです。
RI
※TCS2010年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。