さあ、今週は、先週できあがった「骨格」を「文章化」しなければなりま
せん。そうしないと、紙芝居作りが間に合わなくなります。情景描写や
セリフをどうするか?宇宙の知識を織り交ぜて魅力的なストーリーに
どう仕上げてゆくか?子どもたちがどう動くか楽しみである反面、果た
してうまく文章をまとめあげることができるのかとても心配でした。
「宇宙船の中から地球をふと見ると、赤く染まって火星のようだった。
それは争いで傷つき倒れた人々の血の色だった。」
「いい文章だねェ」
「おれもそう思うよ」
「宇宙に飛び出して小惑星に向かうところの描写はこれでばっちり!」
自分たちの担当部分を決めて、分担して文章を書き上げてゆきます。
「大きくジャンプするにはかがまないとダメ」とよく言いますが、先週、
「共創の苦しみ」を乗り越えた子どもたちは、セリフと描写を効果的に
交えながらどんどんストーリーを完成してゆきました。意味のある「よど
み」が子どもの探究には必要なのだと再認識しました。
「ほとんど重力がない小惑星でダイナマイトを爆破させたら破片が上から
降ってくるかなあ?」
「爆破が起こったとき思わず耳をふさいだけど、音がしないから不思議に
感じたっていうのはどう?」
できあがっては、読み直し、宇宙ならではの様子をよりリアルに表すため
に、細部を修正して洗練してゆきました。
「ピンク色の宇宙に出たっていうけど、ピンク色の宇宙なんてある?」
すると、ある子が家から持ってきた星の写真集をぱらぱらめくり始めまし
た。みんな周囲に集まり、探してゆくと
「あった、これピンク色だよ」
それは、オリオン座にある馬頭星雲でした。馬の頭をした真っ黒な雲
のような塊の周囲がピンク色に輝きとてもきれいです。
「でもさあ、どうして火星と木星の間の小惑星帯にいたのに、1500光年
移動しちゃったわけ?」
「ブラックホールを通過したってのはどう?」
「この間読んだ新聞に載ってたじゃん。オリオン座のぺテルギウスが
超新星爆発を起こしたらそこにブラックホールができるって」
「じゃあそれでできたブラックホールの出口が小惑星帯の近くにできて
そこに吸い込まれたってことにしようか?」
「いいねえ!」
子どもたちは、ストーリー作りに役立ちそうな宇宙についての知識を資
料の中から見つけては、そこに大胆な発想を付け加えていきました。
エンディングに向かうクライマックスの部分にさしかかり、子どもたちの
考えが割れました。宇宙での生命を発見した人類は彼らと協調して
平和に暮らすか、彼らを滅ぼして自分たちだけで新たに見つけた星を
独占しようとするか、どちらの方がよいか……
「結局、地球を出ても人間のすることは変わりそうもないもんなあ」
誰かがぽつんとつぶやきました。ストーリーが固まってきて浮かび上が
ってきたのは、まさに「時空因縁」という探究領域で追究すべき、「人類」
の「業」でした。
来週は、いよいよ紙芝居を作成に取りかかります。
「やったあ、ついに絵が描ける!」
もう頭の中にイメージがいくつかできている子はホワイトボードに披露し
始めました。気分が最高潮に盛り上がって、最終週に突入です。
RI
※TCS2009年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。