「ロストエナジー」発表の余韻さめやらぬ内に新テーマに突入です。
探究領域は「自主自律」。かけがえのない自分をどう活かしてゆくか
追究します。そのためのテーマは『遺伝』。低・中学年で、身体的特徴
や性格など目に見えたり、実際に感じることのできる「自分」について
探究してきました。これに対して、高学年では、いよいよ、目に見えない
し、感じ取ることもできないけれども、自分を自分たらしめている働きに
ついて探究します。
「わたしお母さんと同じで耳の上に穴があいているの」
「おれは肩にあざがあるぞ」
自分が親からどんな身体的な特徴を受け継いだか……
どうして血のつながった親、兄弟姉妹、親せきと似てしまうのか……
受け継いでうれしい遺伝もあれば、あまり受け継ぎたくない遺伝もある。
自分を自分らしく見せているものは実は先祖から代々受け継がれたもの
であることに早くも感動する子どもたち。遺伝について知っていること、
遺伝と聞いてイメージすることをウェッブマップにまとめた後、遺伝の
メカニズムについて貴重な画像やCGをふんだんに使って、とてもうまく
解説してくれる、NHKスペシャル「人体~遺伝子編~」を早速、見ました。
「人間の細胞って60兆個もあるんだ」
「そのすべてにDNAがあるのか……」
「すげえ、DNAって本当に二つの糸がらせんにからまっているんだ」
「遺伝子ってタンパク質を作るためにあるのか」
染色体がほぐれて、細長いDNAの糸のかたまりがあらわになった写真
やDNAの一部がゆるんでそこに酵素がくっついて遺伝情報を転写した
RNAが誕生した様子の画像など、見ていてぐっと引き込まれる内容です。
さて、このDVDを見た翌日、番組を見て、さらに追究したくなったことは
何かと子どもたちに尋ねると
「遺伝子がどうやって複製されるか知りたい!」
という意見が出てきました。映像を見ていて、遺伝子がコピーされて
タンパク質が出来上がって行く道筋に関心を抱いたというのです。
そこで、DVDの内容を思い出したり、別の資料を用いたりして、遺伝子
はどこにどんな形で存在するのかを知ることからスタートしました。
「たった4文字だけなんだ。単純なんだね」
ある男の子が、遺伝という複雑な仕組みが、たった4種類の塩基の
配列で決まっていることに驚きました。
「じゃあ、ぼくたちも遺伝子を読み取ってみようか」
塩基が3つ集まったものをコドンと呼び、それが作るべきアミノ酸の
種類を決定します。それを真似て作った3文字一組で意味を持つ
「暗号コード表」を渡して、いったいどんなメッセージが隠されているか
を探すゲームをしました。
「結構むずいな……」「意味のあるメッセージにならない……」
子どもたちは必死に暗号解読に取り組みます。ランダムに並ぶ文字列
の一部だけが意味あるメッセージ、つまり遺伝子です。したがって、その
一部がどこからスタートし、どこで終わるかがわからないと読み取れない
のです。
「わかった!“終わり”はATCだから、その前から逆に読めばいいかも」
ある子がいいところに着目しました。すると……
「できた!『さ』『け』『は』『い』『や』!ああ、これは酒が飲めない人の
遺伝子だ!」
これはあくまでも「読み取り」の「練習」に過ぎなかったのですが、子ども
たちは、本当に遺伝子を「読み取った」ように興奮しています。実際に
DNAから遺伝情報を読み取ってを作っていくプロセスは、子どもたち
が行っていたことと全く同じです。
「来週は、実際にどうやってコピーが行われるか、その仕組みを知ろう!」
遺伝ワールドに早くも夢中になった1週間でした。
RI