【探究領域】共存共生
【セントラルアイディア】種は互いに影響し合って生きている。
<テーマ学習 レポート>
1週目は「生き物」について知っていること・イメージすることを語り合ったり、映像や資料を通して身の回りの生き物たちには元々その土地に暮らしている「在来種」と外からやってきた「外来種」がいるということを知りました。
外来種は元々その土地で暮らしていた在来種に影響を与え、それが巡り巡って土地自体にも影響を与えているケースがそこここで見られるようです。
子どもたちと観たドキュメンタリーによると森で暮らすクワガタたちは朽木を住処としたり、幼虫はその朽木を食べて育ちます。そして幼虫やクワガタのフンが栄養たっぷりの土となり、新たな草木を育んでいて正に森の再生に欠かせない役割を担っているということです。
しかし近年では外国産の強いクワガタが日本の森に影響を与え始めているそうです。例えば同じオオクワガタでも国産のオオクワガタと外国産のオオクワガタでは力も性格も外国産の方が強く凶暴であっという間にやっつけられて追い出されてしまうとのこと。
元々その森にいるはずもない外国産のクワガタがなぜ日本の森にいるかというと、ペットして飼い始めたが事情があって森に逃してしまうというケースが多いらしい..。
もしも外国産のクワガタが増えていくと森の循環を支えている日本のクワガタが住む場所を追われ、森自体が変容してしまう恐れがあると言います。
さて、紅葉山公園を子どもたちと歩いてみると、池には大きなミシシッピアカミミガメが2匹とアメリカザリガニが見つかりました。こちらも有名な外来種です。
「なんでアメリカの亀とザリガニが紅葉山公園にいるんだろう???」
「誰かが逃したのかな???」
子どもたちは発見した面白さと疑問でやけに高いテンションです。
さて、身の回りの自然をもっと詳しく観てみよう!!!ということで1年生にとっては初めての電車で外出するフィールドワークに「井の頭公園水生物館」を目指します。
その前に、初めてのフィールドワークを成功させるための約束を3つ話し合って決めることにしました。
TCSではEssential agreementと呼んでいます。
フィールドワークで大切だと思われることを子どもたちにどんどん挙げてもらってから最終的に3つに絞ったものがこちら。
・はぐれない
・人間と生き物を大切にする
・安全第一
「電車では静かにする」、「電車では走らない」、「水生物館では魚を驚かせない」などいくつか出てきたアイディアを見てある子が共通する部分をまとめて「人間と生き物を大切にする」という約束に集約したのがgood jobでした!
この3つの約束と学びの3つのアンテナを意識して、いざフィールドワークへ出発です!一列になって前の子と間を空けないように、横に広がらないように気を付け声を掛け合いながら井の頭公園を目指します。
Essential agreementのおかげもあり、電車の中ではワクワクした様子ながらも静かに過ごすことができました。
時間を無駄にせず何やら修行し始める子も(笑)
井の頭公園に到着すると、早速池に「外来生物にワナをしかけています!アメリカザリガニが水草を切ってしまうためワナをしかけています。」とのポスターがありました。
「たしかあの鳥はカイツブリだ!!」
「あれは在来種だね!」となかなか詳しいキッズたち。
昭和の始め頃までは美しい水が湧き出ていて2日で全ての水が入れ替わる程の水量であったという井の頭池。あまりの水の美しさから徳川家康が江戸城までその水を引いたという話が伝わっているそうです。
しかし都市化の影響により湧き水は枯れ、水草はなくなり、池に暮らしていた生き物たちは住処を失ってしまい、その後は地下水をポンプでくみ上げているそうです。
近年では昔の井の頭池を蘇らせるため、積極的に清掃作業を行っています。数年に一度池の水をすっかり抜いて一斉に清掃し、外来生物を駆除しているとのこと。
「えっ!!?駆除?殺してるの??」と子どもたち。
「ん〜、それはやりすぎでしょー。」
「かわいそ〜う。」子どもたちの気持ちは分かります。
しかし、少なくとも館内の解説文章からは水質をきれいに保ち、水草を元気に育てて、昔の池のようにかわいらしい在来種が暮らす豊かな池を蘇らせているためにがんばってますよ〜!!的な、つまりいいことやってますよ〜!!応援してください!!的なニュアンスしか伝わってこない。
外来種は敵だから駆除駆除〜。でいいのだろうか?
とみんなでモヤモヤ。
このモヤモヤが大切ですねー。
「あ!このポスターさ、ミシシッピアカミミガメだね!」
確かに!井の頭池にもたくさん暮らしているミシシッピアカミミガメです。
一方、トウキョウサンショウウオとトウキョウダルマガエル。どちらもトウキョウという名前が付いているがもう東京にはいない。
都市化とともに水田が住宅や商業施設に変わり、暮らせる場所がなくなってしまったのです。
自分なりに分類した表に生き物たちを記録し始める子が出てきました。
一人が始めるとどんどんやりたくなってくるのが面白いところ。最高です。
美しくてかわいらしい日本の在来種たちの水槽が続きます。
すると、突如水草もない殺風景な水槽が。ブルーギルやオオクチバス、そしてカミツキガメが虚ろな顔つきでたたずんでいます。
たしかに在来種たちと並んで展示されているとこの外来種たちが自分たちの住処に突然やってきたら恐ろしいだろう。
体も小さな在来種たちはかなうわけがない。みんな彼らの餌になってしまうのは明らかだ。
しかし、外来種はそこで生まれたのではなく連れてこられたのだ。。。子どもたちの想いも複雑です。
他にも昔は東京でたくさん観察することができたアカハライモリやミナミメダカは今や絶滅危惧種となっています。私たちがメダカだと思い込んでいるヒメダカに至っては人工的に品種改良されて作られた種。
身の回りの自然は、どうやらシンプルとはほど遠い事情がありそうです。
さまざまなことを発見し、疑問に頭をグルグルさせて、すっきりしないモヤモヤとともに無事初めてのフィールドワークを終えることができました。
YI
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(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
・2020年度 年間プログラム(PDF)運用版
・テーマ学習一覧表(実施内容)