特定非営利活動法人 東京コミュニティスクール

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どうやって文明は生まれるの?

タイトル:Orderless World
探究領域:時空因縁
セントラルアイディア:「文明の歴史から私たちの現在と未来が見える。」

[5・6年生]

『銃・病原菌・鉄』

この作品は、生物学者のジャレド・ダイアモンド博士がフィールドワークで訪れたニューギニアの人々との交流から人類の発展について興味を持ち、その研究の成果としてまとめたものです。

「なぜヨーロッパ人がニューギニア人を征服し、ニューギニア人がヨーロッパ人を征服することにならなかったのか?」

その素朴な疑問に対し、事実をひとつずつ積み上げていく過程は観る者の心をぐっとひきつけます。
スクリーンに投射された映像を食い入るように見る子ども達。

比較的早くに人が住み始めたニューギニアがなぜ文明化しなかったのか。
そこには大きく分けて二つの要因があったようです。
一つは家畜にできる動物がいなかったということ。
もう一つは貯蔵可能な穀物が育つ環境ではなかったということ。

端的に言えば、農業の生産性の向上が余剰生産物を生み、やがて農業に従事しない人たちを生み出します。
その人たちが何かの専門家となり、別分野の開拓につながったというのです。
そして高度な文明が発達したかどうかの分かれ目は地理的条件のみ。

「なんだ、文明が発達した地域ってただ運がよかっただけなのかあ。」

特に6年生は昨年「遺伝」のテーマを学んだだけに、DNAによる人種的優秀性のような西洋的発想に真っ向から反論する内容に新鮮な驚きを抱いているようでした。
日本が世界的にも希有な歴史を持ち、独自の文化を育んできたのも、周りを海に囲まれたこの特殊な地理的環境によるものなんだなあと私自身改めて考えさせられます。

今回のテーマで最も重要視しているLearner Profileは”Knowledgeable”です。

思いつきのアイデアや感想で終わることなく、しっかりとした知識の基盤の上に、自分達なりの考えを築いてもらいたい。
これにはそんなメッセージが込められています。

早速、我々は次の活動として、古代四大文明(エジプト、メソポタミア、インダス、黄河文明)の調査をおこなうことにしました。
各自担当を決め、ホームワークで調べてくることに。

そして、翌日・・・

「家に帰って、5時間も調べちゃったよ〜。」
「すごいことがわかったよ。聞いて、聞いて!!」

授業を開始するやいなや、調査してきたことを発表し、みんなに伝えたいという思いで、クラスの熱気が一気に高まります。
ホームワークに取り組むにあたり、私の方でも参考になりそうな本やホームページを準備しておいたのですが、その範囲に留まることなく、自主的に調査を進めてきたようです。

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黄河文明を担当した5年生の男の子。
甲骨文字の写真を紹介してくれました。

「この字、『木』なんじゃないの?」
「これ、絶対『人』って字だよ!漢字成り立ち辞典で見たことあるもん。」

亀の甲羅や牛の骨に刻まれた象形文字の中には容易に想像つくものも多数見受けられます。
漢字の起源が黄河文明にあったとは。子ども達も驚きを隠せません。

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6年生の男の子はエジプト文明で天文学や測量の技術が発達したことに興味を持ったようです。

「どっちも農耕に関係あるらしいよ。ナイル川が一年に何回か氾濫するから、その時期を知っておく必要があるんだって。太陽とシリウス星の位置関係を見て、それを判断してたんだけど、そこから発達したのが天文学。」
「へえ、農地の大きさを測るために測量術が生まれたのかあ。それが算数につながってるんだね。」

そこへすかさず、メソポタミア文明を調査してきた女の子がカットインしてきます。

「メソポタミア文明は医学が進んでたんだって。当時から痛み止めや仮歯の技術があったらしいよ。」
「何それーーーー。信じられない!」

そんなやりとりを続けていると、あっという間に3枚の模造紙が埋まっていきます。

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古代文明で発明されたものの中に現代につながっているものがある。
そんな驚きが彼らのもっと知りたいという欲求を刺激したようです。

今回のテーマで取り扱う内容は正直子ども達にとって興味がわきやすいものではないでしょう。
学んでいく中で少しずつでも興味が芽生えてくれれば、そんな気持ちでのんびり構えていたのですが、思った以上の反応を見せてくれました。

模造紙に調べてきた内容を整理していくと、類似点が多いことに気づきます。
文明を構成する共通的な要素が次第に明らかになってきたようです。

HY

TCS2014年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

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