特定非営利活動法人 東京コミュニティスクール

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紙芝居が完成したぞ!

[5・6年生]

“よどみ”もあれば、けんか直前の“激論”もあり、かと思えば“建設的”
にアイデアを増幅させてゆく瞬間もある。そんなJazzyなかけあいが「収斂」
のフェイズでは繰り広げられ、コラボレートによるクリエイティヴィティが発揮
されるのを、先週の子どもたちの学びを通して見ることができました。

子どもたちが「対立」にめげず、また、「まだまだだな!」という私のダメ出し
にもへこたれずに動き続けたのは、「よいアウトプットを創り出したい!」と
いうクリエイティヴマインドを私も含め学びの参加者全員が共有していたから
でしょう。「摩擦」は、人格どうしのぶつかりあいや非難ではなく、よい作品
へと磨きあげてゆくために不可欠な過程だととらえているのです。

しかし……もう時間が残り少なくなってしまいました。締め切りという時間的
制約の中で、どれだけよいアウトプットを出すか、そのためにギリギリどこ
まで粘れるかがクリエイターには求められます。もう限界か……子どもたち
に任せ過ぎだったのか……あまりにも負荷をかけ過ぎたのか……学びの
落とし所の判断を誤ったのではないかという恐れを抱きつつも、なんとなく
この子たちに委ねてみようという気持ちになってしまったのです。

子どもをなめていはいけない!と……

その結果、明日はもうテーマ発表だというのに、結末がどうなるか決まって
いなかったのです。太陽のブラックホール化によって地球が飲み込まれ、
別の空間に移動するというところまでストーリーはできているのですが、
太陽が消えた世界の中で人類がどう生き延びるのかについてアイデアが
固まっていなかったのです。今回の作品では「人類の可能性」という前向き
なメッセージを伝えるという制約があるので、安易に人類は滅亡した……
では終われません。

いよいよ「決断」をせまる最後の全体編集会議を実施しました。クリエイティヴ
マインドの本領は、いざという時に発揮されます。追いつめられたとき、もう
ダメだ!お手上げだ!と縮んでしまうか……それとも火事場のばか力を出す
のか……

「もしかしたらエイリアンは、少ない光でも暮らせていけるDNAを持っていた
んじゃないのかな」
「千年後なら遺伝子操作の技術がもっともっと進んでいるから、そのDNAを
人間に持たせれば暗いところでも暮らせるかも」

やはりこの子らはスゴイ!いざというときに「固まらない」姿を頼もしく思いま
した。

ここまで何度も、何度もストーリーを追い続け、練り上げてきたからこその
「ひらめき」と、これまでの日々の学びの蓄積(※彼らの先輩が以前行った
「遺伝と進化」についてのテーマ学習、以前、朝の会でとりあげた、「リン」では
なく「ヒ素」でDNAを形成している生物の存在をNASAが発表したニュース
についての話)を「つなげる」底力とを見事に見せてくれました。

さらに今回特筆すべきことは……このアイデアだけに飛びつかず、他の可能性
についても意見を出して多面的に判断したところでした。

「太陽が燃える原理を利用して人工太陽を作ってもいいんじゃないかな」
「地球のすぐ近くにあるならあんなに大きい必要はないよね」
(おお、これは核融合の話だな……)

「星は宇宙にいっぱいあるよね。恒星は太陽だけじゃないし、他の恒星の光を
利用することもあるんじゃない」
「特殊な鏡みたいなもので光を集めてもいいよね」
(おお、宇宙に巨大な鏡を作るというプロジェクトは確かに考えあれているな……)

というように、結果的に、生物学的、化学的、物理学的という3つの側面に
分けて考えるということを「自然」に成し遂げていたのです。

さあ、いよいよ、この中からどれを選ぶか……まず5分間じっくり一人ひとり沈思
黙考しました。そして「多数決」のために挙手。結果は……

DNA操作 0票 人工太陽 5票 恒星の光を集める 4票

なんとも微妙な結果に。すぐに、自分の選んだ意見のよいところのアピールと
相手の意見への「説得」が始まります。

「人工太陽を作るのはとてもいいんだけど燃やすための材料はどう集めるの?」
「ふつう輝いている星はみんな恒星でしょ。だから太陽以外で太陽の代わりを
する恒星が移動した宇宙空間にあっても不思議ではないでしょ。」

冷静に意見交換し、再度考えます。その結果、「人工太陽」を結末に用いる
ことにしました。

「太陽はどうやって燃えてるんだろう?」

早速、資料を調べます。すると宇宙には水素が大量にあり、太陽は水素を
熱核融合反応によってヘリウムへと変化させることで大きなエネルギーを
出していることがわかりました。ある子が、他の星はどうなっているんだろうと
ページをめくっていて土星の部分を読み始めました。

土星の成分はほぼ水素でできており、もし土星がすっぽり入るプールに水を
入れれば土星は浮く……水素ばっかり!

「ぼくたちが探検している星は、土星のすぐそばだったよね。」
「土星の大量の水素を使って人工太陽を作ることにすればいいんだ!」

それをきっかけに一気にラストへ向かっての流れが固まり、“ようやく”
シナリオが出来上がりました。昼食を食べてすぐに、出来上がったシナリオ
をみんなで読み合わせました。

「やっとできたねえ……」

安堵感と充実感がみなぎります。

「あとは、絵を完成させるだけだ!」

残業時間を入れても残された時間はあとわずか。まるでプロダクション会社
の「締め切り間近」の怒涛の追い込みさながらの雰囲気です。誰も遊ぶこと
なく、有機的に分業し、ひたすら絵作りに没頭していて、

(すごい、本物のクリエイティヴ集団のようだ……)

と思いました。

1枚、1枚着々とできあがり、ついに紙芝居完成!あとは明日の発表会で「披露」
するのみです。本当にみんなよく頑張った!

RI

TCS2011年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

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