特定非営利活動法人 東京コミュニティスクール

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ストーリーが固まった!

[5・6年生]

ゴールデンウィークが明け、今週は、「俯瞰」して選んだアイデアを「収斂」し、
ストーリーを固めるために全力を挙げる1週間です。もし、ここでストーリーが
固まらなければ、紙芝居の完成は危ぶまれます。

「素」の意見を思いっきり「発散」するだけでなく、お互いの考えをすりあわせ、
建設的に取り入れ、組み合わせながら、優れたアイデアへと洗練させてゆく
「収斂」のフェーズでも“Jazzyなかけあい”ができるか……。

今回、私がもっとも留意していたのは、この点でした。

これまでの探究学習の積み重ねによって、「探」~explore~については力を
つけていました。しかし、自律的で質の高い「探究」を行えるようになるには、
「究」~inquire~についても力を高めていかなければなりません。

“熟考”し“究”めてゆくことこそ、小学高学年段階からの「探究」における“重点
課題”と言えるでしょう。この課題を子どもたちとともにどうクリアしてゆくか……
「探究教師」にとっても正念場です。

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ここまで3週間、9人のメンバーそれぞれが自分自身のアイデアをとことん発表
してきました。それは、同時に、自分以外の考えを繰り返し聞かされたということ
で、また、相手の意見をよりよくするような関わりをしていたので、いつしか、
相手の意見も熟知し、その意見に触発されて自分の意見をふくらませ、知らず
知らずのうちに新たな発見や理解に到達していました。

まさに機は熟した状態であるはず……よし!勝負をかけるぞ!

「探究教師」として子どもと関わるためのギアチェンジ!

まずは、ローギアに入れて……ここまで練り上げてきたアイデアのうちで絶対に
自分は譲れないアイデアを発表せよ!と命じました。

すると……ブラックホール、時間のゆらぎ、記憶喪失、異星人、未来からきた人
と現代人との交流……あっという間にホワイトボードに項目がそろいました。

そこで即座にセカンドにギアチェンジ!

「これらの項目をつなげてどんなストーリーができるだろう?」

と問いかけます。ゴールデンウィーク前だって、ストーリーを作るために頑張った
のになかなかできなかったのでは??それなのに、今、改めて“ストーリーを
作れ”と問いかけても再び煮詰まるだけでは……確かにそうです。そこで、ギア
をここで一気にトップに入れます。

「ここまできみたちはさんざん考えてきたし、他の子の意見も知り尽くしている。
大したもんだ!もう腹をくくって、一つのストーリーにまとめられるはずだ!」

アクセルを一気に踏み込みます。

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すると、ある子が、

「昨日、ブラックホールについて調べたら、太陽が超新星爆発してブラック
ホール化する可能性があるって。だからこれを地球に迫る危機にしてもいい
んじゃないかと思う」

ストーリーの口火は地球からの脱出によって切られます。地球がブラックホール
に飲み込まれるというアイデアは、これまでも出されたのですが、全員の納得
を得られず却下されていました。しかし、地球温暖化、戦争、放射能といった
ありがちな危機や、単に宇宙に出たいから探検に行くという流れでストーリー
が始まるのではインパクトがない!面白味に欠ける!という問題意識をみんな
共有していました。そんな中、改めて地球がブラックホールに飲み込まれる
という設定に対する裏づけが得られて、子どもたちの心がぐっと動きました。

「とりあえず、これでいってみようよ」

誰かの一声でみんなの意見がまとまりました。それは、もう時間がないから、
投げやりに決めてしまったというのではまったくなく、議論し尽くした末にストン
と落ちたという感じでした。

いったんとっかかりが決まると、それに呼応してストーリーが流れ始めます。

未来の人は地球がブラックホールに飲み込まれているのを知っているから
それを警告しにくる……では、その警告を主人公はどう受け止めるのか……
実際に、地球はブラックホールに飲み込まれてしまうのか、もしそうなら地球は
なくなってしまうことになるのか……

さて、あまり詳しく語り過ぎてしまうとネタバラシになってしまうのでこの辺で
とどめることにしましょう。

子どもたちは、時に考えが煮詰まりそうになりながらも、みんなで知恵をしぼり、
見事に90分でストーリーの骨格を固めてしまいました。これは、一昨年、同じ
テーマ学習を行ったときと比べると「雲泥の差」でした。そのときの子どもたちの
ぐだぐだぶりは半端ではなく、相当強くエンカレッジしないと前進できない状態
でした。しかし、今回は、激論を闘わせながらストーリーを磨き、考えが行きづ
まりそうになってもなんとか考え続けました。たまに疲れてぐだっとなりかける
のですが、その都度なんとか自力で持ち直しました。

決してすんなりと前進するわけではないものの、ただ「よどむ」だけではなく、
ゆっくり流れ続ける……

“深い河は静かに流れる”ということわざのごとく熟考する子どもたちを見て、
これが、「収斂」のフェーズでの“Jazzyなかけあい”なのかもしれないと感じ
ました。

次週は、このアウトラインをもとにセリフ作りとシーン分割を行いつつ紙芝居の
製作に入ります。発表に向けて再び学びを加速させ、怒涛のラスト2週間へと
突入です。

RI

TCS2011年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

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