いよいよテーマ発表当日。練り上げてきた「提案」をみんなに発表する日が
やってきました。
「10分以上になるとちゃんと聞いてもらえなくなるよね!」
どんなによい提案でも主張と論拠が明確に伝わらないと「共感」は得られません。
そこで、提案は短くわかりやすく、プロジェクターで映すメッセージや資料も簡潔に
まとめることに心がけ、発表に臨みました。
提案その1・火力発電の熱効率を上げよう!
火力発電は、需要に応じて発電量を柔軟に変えられる効率のよい発電方法
である。火力発電は熱効率が悪く、排気ガスを出すイメージがある。しかし、
発電のためのエネルギー源を石炭・石油ではなく天然ガスにすることによって
高温でタービンを回すことができ、ガスタービンと蒸気タービンの2つのタービン
を回し、発電効率を55%まで上げることができた。そのうえ、二酸化炭素や窒素
酸化物、硫黄酸化物の排出量は石炭・石油に比べて低くクリーンである。火力
発電の熱効率を上げ、排気ガスの排出量を減らす努力をすることが、安定して
電気を得るには必要なことである。
提案その2・新エネルギーは組み合わせて自家発電しよう!
太陽光発電は発電量が低く、原子力発電所1基分を「メガソーラー」でまかなおう
とすると山手線の内側全部の面積が必要だ。太陽発電は大規模発電所による
発電よりもそれぞれの家で自家発電した方が効率的だ。さらに太陽光発電だけ
では天気の悪い日や夜間などに困るので燃料電池による発電も組み合わせれば
安定する。
提案その3・都市部から電気自動車を広めよう!
都市部の方が自動車の通行量が多く排気ガスも多く出るし、移動が短距離
なので、クリーンで航続距離の短い電気自動車を普及するのに適している。
また、車体をコンパクトにすれば渋滞解消にもつながるうえに、電池のサイズ
も小さくでき、簡単に取り外して交換可能なものにすれば、充電するのに時間が
かからず効率はさらによくなる。
声の大きさも態度もさすが高学年と言わしめるものになりました。内容も自分の
言葉として身についていたので、紙をじっと見つめて棒読みになることはなく、
しっかり伝えることができました。さあ、後は質問を受けるのみ……
「提案はとても素晴らしく、説得力があったのですが、自分達は何ができるのか
ということについてはどう思いますか?」
こうなったらよいという提案だけでなく、自分達の身近でできることをきちんと
考えたか、という鋭い質問です。提案内容についてさらに詳しく説明しようという
頭でいっぱいだった子どもたちは見事に固まってしまいました。
「ああ、なんで質問に答えられなかったんだろう……」
発表後のふりかえりで、子どもたちは残念がりました。今回の提案の動機は
身近にできることの大切さは重々わかっているが、それだけではエネルギー
問題は解決しない!ということを訴えることでした。スイッチをこまめに切ったり
待機電力を無駄にしないためにコンセントを抜いたり、という日々節電することは
当然のことで、今後、持続的にエネルギーを享受するために、エネルギー効率
を高める工夫が必要だ!ということを主張したかったのです。そのことを話し合っ
ていたのに、いざというときにそのことを言えなかったのです。
「まだどっか他人事だったのかな……」
調べただけで、自分たちが主体的に提案に関わっていこうとする思いが足りない
と受け取られてしまったことが大きな反省点として子どもたちの胸に刻まれました。
・論旨は明快
・具体的に練られた提案
・課題がはっきりしていてよい
と、フィードバックのほとんどが、提案内容についての「賛辞」と「共感」でした。
子どもたちはこの点については満足し、自信を高めました。
と同時に
・電気自動車が普及したら世の中はこうなるという夢を語ってほしい
・よりよくするための自分たちのアイデアがあるとよい
といった、こうすればもっとよくなるという貴重なアドバイスももらいました。
「提案をレポートにまとめて政府や企業に送ろうよ!」
フィードバックで得た「ヒント」を加味して、見学した企業や電話インタビュー
した企業、さらには環境省などのお役所に自分たちの提案を届けるべく、
報告書としてきちんとまとめようと子どもたち自身が言い出しました。
これこそ主体的な行動!提案を夢物語で終わらせず、何らかのアクションを
社会に向けて起こすことが共存共生の第一歩です。自分たちだけでなく
みんなが幸せに豊かに暮らせる社会を作るために……
学びが終わっても、子どもたちは主体的に動き、追究は続きます。
RI