校長 市川 力
メディア履歴(詳細)

市川 力 著
「英語を子どもに教えるな」
 中公新書ラクレ

 2004年2月10日初版


子ども英語2005年3月号
アルク(インタビュー記事)2005年1月31日
巻頭インタビュー英語を子どもに教えるな
ー「学び」のない英語は身につかないー

※記事より抜粋

子どもたちとともに英語を学ぶことができる小学校の先生に期待

●市川さんが校長をなさっている東京コミュニティスクールでも、外国人との出会いを重視されているのですか。

市川 この学校には、何かを体験したり深く考えたりしながら、少人数でじっくりと学びたいという子供たちが通ってきています。その多くは、自分のやりたいことを追求したい、自分自身で学びを深めていきたいと思いながら、小学校ではなかなかそれが実現できないために通学していない、いわば積極的な不登校児です。ここでは、そんな子どもたちが家族のようなグループをつくり、徹底的に社会に出ていって学んでいます。

市川 ですから、この学校では外国人だけでなく、いろいろなおとなたちと交流する機会を大切にしているのです。たとえば「テーマ学習」の時間では、数週ごとにテーマを変え、積極的に社会との接点を求めます。今は地区の安全パトロール活動に取り組んでいて、警視庁OBの方に協力してもらい、防犯マップをつくったりしています。

市川 このような活動は、うちのような少人数の学校だからできるのだと思われるかもしれません。しかし、班単位のグループ学習を取り入れれば、小学校でも同じようなことができるはずです。ちょっと工夫をするだけで、子どもたちがリアリティを感じ、自発的に学びたいと思うような状況はつくれると思うのです。

●小学校の英語活動についてはどう思われますか。

市川 もし、どうしても英語活動をするというなら、小学校の先生にこそ英語を担当してほしいですね。私が今、いちばん恐れているのは、小学校の英語活動が教科になることで、中学校や高校の英語科の先生が小学校に来て、文法中心・スキル中心の英語を教えるようになることです。英語だけを教科として切り取って教えるような環境では、子どもたちに自発的に学びたいと思わせることはむずかしいでしょう。

市川 小学校ではまず、子どもたちが英語に親しめる環境をつくり、そのうえで実体験を積む機会を与え、それを持続させることが大切だと私は考えています。そうした環境をつくるために必要なのは、英語を専門的に教える能力ではなく、子どもたち全体を見渡しながら、一人ひとりの適性や能力、興味のあることなどを把握する能力です。子どもたちを巻き込み、子どもたちといっしょに楽しみながら何かを学んでいくことができる能力といってもいいかもしれません。小学校の先生ならではのこうした能力を英語学習に生かし、他教科の学びともつなげていくことが必要だと思っています。


朝日新聞朝刊−書評
苅谷剛彦(書評)2004年4月4日

 文部科学省は、「英語が使える日本人」の育成をめざし、小学校への英語教育導入の検討を始めた。だが、本書を読むと、それがどんなに危険な政策か、にもかかわらず、英語熱に浮かれた社会の心理がいかなるものかが見えてくる。
 著者は、アメリカで長年にわたり日本人の子どもを塾で教えてきた経験を持つ。英語に取り囲まれた、一見恵まれた環境のなかでも、子どもをバイリンガルに育てるには、親にも子にも相当の覚悟がいる。少数の例外を除いて、多くの場合は、発言だけはネイティブ並みでも、話の中身や考える力は、日本語も英語も中途半端な「セミリンガル」になってしまう。話を組み立てる語彙や思考力が育たないからだ。
 日本人の英語によるコミュニケーションの難点は、日本語での論理的な思考力の欠如にあるとの診断も合点がいく。大人たちの英語コンプレックスの裏返しで性急な判断を下す前に、一読すべき一冊である。

苅谷剛彦(東京大教授)



>>今日のスクールINDEX
>>TCSの本棚
東京コミュニティスクール >>リンクバナー

東京コミュニティスクール Tokyo Community School
〒166-0012東京都杉並区和田3-37-5 第5鴨下ビル (1F〜4F・屋上)
E-mail:school@tokyocs.org TEL:03-3313-8717 FAX:03-5305-7234